クラインの壺(岡嶋二人)感想

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書籍情報

           
タイトルクラインの壺
著者岡嶋 二人/菅 浩江
出版社講談社
発売日2005年03月15日頃
商品説明現実も真実も崩れ去る最後で最恐の大傑作! 200万円でゲームブックの原作を、謎の企業イプシロン・プロジェクトに売却した上杉彰彦。その原作をもとにしたヴァーチャルリアリティ・システム『クライン2』の制作に関わることに。美少女・梨紗と、ゲーマーとして仮想現実の世界に入り込む。不世出のミステリー作家・岡嶋二人の最終作かつ超名作。
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目次

作品紹介

この作品を短く紹介するならば”バーチャルリアリティという刊行当時(1989年)は認知度が低かったSF要素を取り入れつつ、ミステリとしての完成度も随一である意欲作”というところだろう。

主人公が出版社宛に「ゲームブック」のシナリオを投稿したところ、「イプシロン・プロジェクト」というバーチャルゲームの制作会社から思わぬオファーを受けたことから本作は展開されていく。

大学4年生、働き口なし!という状況の主人公は喜々としてその話に乗り、結果としてバーチャルゲームの原作者兼テスターとして採用されることに。

プレイヤーとしてバーチャルゲームの再現性の高さを目の当たりにした青年は、次第にそのプロジェクトに心を奪われてゆくこととなる。

ところが、同じくテスターとしてプロジェクトに参加していた少女が突然失踪する所から物語は一気に暗転。主人公は「イプシロン・プロジェクト」に疑問を抱くようになり……これがストーリーの概要である。

感想(少しネタバレあり)

設定自体が当時としては斬新で楽しめるものになっており、今読んでもちゃんと面白い。

1989年という時代は現在のようにPC、インターネットが普及していたわけでは無いことを考えると(一般的にインターネットが普及したと言われるのは90年代半ばであり、PCの一般家庭への拡大もインターネットの普及によると言われる)岡嶋二人のアイデアは相当時代を先取っている。

まだ本当の意味でバーチャルリアリティが空想でしかないような時代で生まれた作品なのだ。

そんな前衛的な要素を500pという長編に練り込み、読者を退屈させること無く作品へ引き込む筆力は賞賛に値するし、その要素を岡嶋二人本来のテリトリーであるミステリへ見事に落とし込んだテクニックは素晴らしいの一言。

バーチャルリアリティ=仮想現実と現実世界の交錯。そして、仮想世界も現実世界も疑うようになってしまうくらい混迷してしまった男の行き着く先とは?バーチャルリアリティを巧みに利用したトリックが光る秀作だ。

やまぐろ
システムエンジニア
SESで業務アプリケーション開発、エンドユーザ向け機能などの開発に携わっている文系(経営学)卒エンジニア。
当サイトでは読書記録を残したり、ガジェットのレビューをしたりしています。
たまにエンジニアっぽい記事を書いたりすることも。
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